マニラのeそよ風

 トップ  >  「マニラのeそよ風」一覧

第222号 2004/03/05 四旬節の四季の斎日の金曜日

アヴェ・マリア!

兄弟姉妹の皆様、

聖ピオ十世会はフレー司教を代表として、全ての枢機卿たちに手紙を送りました。これは現在のカトリック教会の極めて危機的な状況の故に許された SOS の叫びでありました。

 この警報を発することを決定させたのは、2003年5月24日に行われたカスパール枢機卿の講演会でした。聖ピオ十世会の総長フレー司教は、ヨハネ・パウロ2世教皇様の書かれた Ecclesia in Europa の中で言及された「静かな背教」という分析に全く同意しますが、ローマ当局がまさにエキュメニズムによってこの背教が引き起こされていることを見ようとしないことを嘆き、現在の危機に対する本当の救済策を提案するのです。

 今回は、聖ピオ十世会がカトリック教会の全ての枢機卿様たちにお送りしたお手紙をご紹介致します。

罫線


FRATERNITE SACERDOTALE
SAINT PIE X
Schwandegg
CH 6313 MENZINGEN
TEL [41] 41 755 36 36
FAX [41] 41 755 14 44

メンツィンゲンにて、2004年1月6日
主の御公現

枢機卿閣下

 教皇ヨハネ・パウロ2世の教皇職25周年に際して、枢機卿閣下及びその他の枢機卿たちに教会の現状に関する私たちの最大の心配を分かち合うために申し上げることが重要だと思われました。最初、同封の論考は教皇様に個人的に宛てられましたが、教皇聖下のご健康状態が悪化しているので私たちは教皇様に直接お手紙を差し上げるのを控えました。

 この25周年の祝儀を取り巻く楽観主義を越えて、世界とカトリック教会とが辿っている極めて深刻な状況は誰の目にも明らかです。教皇様ご自身も、その使徒的勧告『エクレジア・イン・エウローパ(ヨーロッパにおける教会)』において、特に私たちが生きている現代は、「静かな背教」の時代であり「実質的な不可知論と宗教無関心の一種」がはびこり「多くのヨーロッパの人々は霊的な土壌もなく生き、自分たちに遺産として残されたものに石を投げて壊す遺産相続人であるかのような印象を与えている (1)」と認めておられます。

 この悲劇的な総括の幾つかの主要な原因のうち、その第1位の原因として、第2バチカン公会議によって公式に始められ、ヨハネ・パウロ2世によって促進されているエキュメニズムをどうして挙げないでいられるでしょうか。新しい一致を実現させるという公然の目的において、「私たちを離すものよりもむしろ私たちを一致させることをもっと見つめる」という意志の名によって、分裂の原因として現れるような他にはないカトリックらしい要素を昇華させ、再解釈し、脇に置くと主張されています。このようにして、キリストの神秘体がすなわちカトリック教会であること、またカトリック教会の外には救いがないことという聖伝の常なるまた一致した教えが軽んじられ、このエキュメニズムは教会の最も美しい宝の数々をあたかも破壊したかのようです。何故なら完璧な真理の上に建てられた一致を受け入れる代わりに、このエキュメニズムは誤謬と混じっている真理のかけらに適応した或る一致を作り上げようと望んだからです。

 このエキュメニズムこそが典礼改革の主要な理由でした。私たちはこの典礼改革の結果として信者たちの信仰と宗教の実践がどれほど悲惨なものとなったかを知っています。和らげた表現を使い、カトリック信仰を打ち立てる能力を欠いたものを出すために、天主によって息吹かれたテキストを変質させながら聖書を訂正させたのもエキュメニズムです。そしてこのエキュメニズムこそが、今度は新しい教会を作ることを計画しています。それについてカスパール枢機卿は最近の講演会 (2) でその概要を描き出しています。このようなカトリック教会つまり神秘体におけるキリストを解消させてしまうような、そして神秘体との交わりの真の基礎である信仰の一致を破壊するこのエキュメニズムの推進者たちとは、私たちは交わりを持つことが全くできません。彼らの言うような一致を私たちは望みません。何故ならそれは天主が望まれるものでもなく、カトリック教会を特徴付けるものでもないからです。

 従って私たちは同封の文書によって、このエキュメニズムを分析し告発するつもりです。何故なら、教会がまずこのエキュメニズムというユートピアを明らかに放棄し、ピオ11世の使った言葉によれば「カトリック信仰の基礎を完璧に破壊尽くす (3) 」このユートピアを断固として排斥することから始めなければ、教会は天主から受けた自分の使命に答えることが出来ないだろうことを確信しているからです。

 全く正当な権利によってこの同じカトリック教会に属していることを自覚しつつまた教会に常にもっと奉仕したいという望みに燃えて、現行の教導職が一刻も早く教会の数世紀にもわたる言葉遣いを取り戻すために枢機卿閣下のお力を範囲の及ぶ限り全てをなしてくださることを、私たちは枢機卿閣下に懇願したいと思います。教会の数世紀にわたる言い方によれば、「キリスト者たちの一致は、かつて不幸にしてキリストの唯一の真の教会を離れた離反者たちが、彼らの離れたキリストの教会に戻ってくるように促進する以外には達成できない (4)」のです。この言い方を取り戻したとき、塩が味を失ったために崩壊へと走る世界において、カトリック教会は、もう一度、真理の灯火となりまた同時に救いの港となることでありましょう。

 枢機卿閣下、私たちは教皇聖下の代わりをしようなどとは些かも望んでおりません。私たちは、偽りのエキュメニズムによって教会が置かれた泥沼から抜け出すために力強い必要な対策をキリストの代理者から待っているのです。全教会における最高・完全・普遍の権能を受けた方、つまり教皇様は、これらの救いの行動を起こすことが出来ます。私たちが祈りにおいてペトロの後継者から期待するのは、教皇様が私たちの発信する非常警報をお聞きになり、教皇様が愛徳を、初代教皇がその職務を受けるときに求められた「Amas Me plus his ? おまえは彼らよりも私を愛するか」という最高の愛徳を、英雄的な程度までお示しになりますように、ということです。この愛徳こそが教会を救うべきものです。

 枢機卿閣下、イエズスとマリアとにおいて私たちの尊敬に満ちた献身的な念をお受け下さい。

+ベルナール・フレー
聖ピオ十世会総長

フランツ・シュミットバーガー+
第1総長補佐

+アルフォンソ・デ・ガラレッタ
第2総長補佐

+ベルナール・ティシエ・ドゥ・マルレ

+リチャード・ウィリアムソン


(1) ヨハネ・パウロ2世、"Ecclesia in Europa", n° 7 et 9, La documentation catholique n° 2296 du 20 juillet 2003, p. 668 ss.
(2) W. Kasper, "The Tablet", Saturday, 24 May 2003, "May They All Be One? but how? A Vision of Christian Unity for the Next generation."
(3) ピオ11世、1928年1月6日の回勅『モルタリウム・アニモス』AAS 20 (1928), p. 7.
(4) 同上 p. 14


罫線


トマス小野田圭志神父 (聖ピオ十世会司祭)