マニラのeそよ風

 トップ  >  「マニラのeそよ風」一覧

第162号 2003/07/10 聖なる七兄弟殉教者および殉教者、聖女ルフィナ、聖女セコンダ

フェリシタと七人の息子たち


「革新の精神は、司祭職から、遙か、遙か彼方にあるように」
(聖ピオ10世教皇 1910年9月1日)

アヴェ・マリア!

■ 質問です

 神父様、聖ルイのロザリオの神秘という本にみょうな訳があります。ロザリオの祝詞は天の元后にふさわしいという章に(終わりの方)福者アランが「天の聖なる天使たちはめでたしの祈りで聖処女に挨拶します―耳には聞こえませんが、霊妙な知力を備えた天使たちは、その祝詞によって、堕落した天使たちの罪は償われ、神は人となられ、全世界が創り直されるのに十分気づいているからです」

 何がおかしいかすぐにお気づきですね。原書は知りませんが、堕落した天使たちの罪が償われるとは?これは何でしょうか。


■ お答えします

 ご質問をありがとうございました。早速、エンデルレ書店発行の「ロザリオの神秘」という本と、聖グリニョン・ド・モンフォールのフランス語原文を見てみました!

 フランス語原文では、この本は「ロザリオの秘密」(le secret du Rosaire)となっており、この中には de dignitate salutationis angelicae(天使祝詞の尊厳について)というラテン語の付録が付いています。"Sancti angeli offerunt B V Mariae hanc salutationem Ave non voce sed mente: sciunt enim quod tali auxilio est ruina angelorum reparata, Deus homo factus et mundus renovatus". (これには、フランス語の訳文も付いており、問題の箇所est ruina angelorum reparata は、la ruine des anges a ete reparee と訳されています。)

 このラテン語を日本語にすると、こうなります。

 「聖なる天使たちは聖なる童貞女マリアにこの「めでたし」のあいさつを声ではなく、心の中で捧げます。天使たちは、そのような助け(=祝詞のこと)によって、天使たちの荒廃は償われ、天主は人となり給い、世界は新たにされたと知っているのです。」

 「天使たちの荒廃は償われ」とは、このようなことでしょう。一部の悪しき天使たちが天主に反抗し地獄に堕ちたために、天国には彼らの占めていた空席が残ってしまった。しかし「めでたし」の言葉をもって、天主による人類救済の勝利が始まり、天主は人となり、イエズス・キリストは御受難による人類の贖いの事業、罪に満ちたこの世界を聖寵によって新たに高める事業を始めることとなった。そのおかげで、選ばれた人間たちが、堕天使によって天国に残された「空席」を再び占めることができるようになった。従って、「めでたし」の言葉をもって、人類が天国に行くことができ、堕天使が地獄に堕ちることで天国に残った「廃墟」を再び回復する(=償う)こととなった、ということです。

 ですから、ご指摘の通り、「堕落した天使たちの『罪』が償われる」とは、不正確な訳で、誤解のもとだと思います。天使たちの「罪」は償われることはありえませんし、一度地獄に堕ちた天使たちはもはや天国に行くことはありえないからです。分かりやすく意訳するとすれば、「堕天使たちの(地獄に堕ちることで天国に残った)廃墟が(人間の救いで)回復された」となるでしょうか?


 ご質問にお答えできていたことを祈ります。
 天主様の祝福が豊かにありますように!

トマス小野田圭志 (聖ピオ十世会司祭)